American Division All-Stars vs National Division All-Stars

Mitchel Athletic Complex on Long Island,Thursday, July 17

2003/8/3

text/ M.Uchitani

 

 2003年7月17日、Major League Lacrosse (MLL) All-star GameがロングアイランドのMitchel Athletic Complexで行われた。結果からいえば27-12でNationalが勝利したわけだが、観客が期待するところは、野球やバスケットボールなどのオールスターゲームと同じで、選手がどのようなハイパフォーマンスを見せてくれるかである。プロのプレーヤーは勝敗にこだわりながらも「魅せる」ことにプライオリティをおかなければならない。そのあたりは、ワールドチャンピオンシップやカレッジスポーツとの違いである。特にオールスターゲームでは、大会運営サイドも「魅せる」ことにこだわる。ハーフタイムショーでは、数々のショーが繰り広げられた。SPEEDSHOT(シュートスピードを競うスピードガンコンテスト)、BULLSAVE(シュートの正確性を競うコンテスト。サッカーのキックターゲットのよう)、FREESTYLE COMPETITORS(シュートコンテスト。バスケットボールで言うダンクシュートコンテストのよう)などなど、フィールドにはたくさんの子供が集まり憧れのプレイヤーのパフォーマンスに見入っていた。特にCasey Powellは子供たちから大人気。
 一番驚かされたのが、試合中に負傷者が出てトレーナーがフィールドに入り、様子を伺っているところに、テレビのリポーターが一緒についていきインタビューしていたことだ。そんなこといいのか?というようり、笑ってしまった。いかにもアメリカ的。
 またルールでも2ポイントシュート(バスケットの3ポイントのようなもの)があり、意識してミドルシュートも多くなる。もちろん選手も自分の持つ能力をフルに見せようと様々なチャレンジを披露する。エキサイティングなプレーや高度なスキルを観れる反面、大味なゲームになるのはしかたがないこと。ただ、このようなゲームは組織だった戦術的要素が薄くなるためディフェンスが組織化されない為にゴーリーは大変だ。見せ場が多くなるからいいかもしれないが・・・。
 印象深いプレイヤーを何人かピックアップしてみた。
-Mark Millon(Baltimore Bayhawks/UMass)
一瞬にしてディフェンスを抜き去るスピードは年齢を感じさせない。スピードでは群を抜いている。
-Tom Marechek(Baltimore Bayhawks/Syracuse)
シュート局面でのアイデアはピカイチ。身体はさほど大きくないが安定感あるスティックコントロールと次のプレイを読んだポジショニング。ファンダメンタルの部分に関しては日本人が見習うべきことは多い。
-Adam Doneger(Rochester Rattlers/Johns Hopkins)
今春のNCAAチャンピオンシップで大活躍。ミドルシュートは健在。この日も2ポイントシュートを決めていた。身体全体を使ったシュートはいいお手本。
-Roy Colsey(Bridgeport Barrage/Syracuse)
学生時代と変わらずパワフルなプレイ。運動量も多い。
他にも、
Jon Hess(NJ Pride/Princeton),
Casey Powell(Rochester Rattlers/Syracuse),
Conor Gill(Boston Cannons/Virginia)
など有能なプレイヤーが高いスキルを見せてくれた。
 しかし、なんといってもGary Gait(Baltimore Bayhawks/Syracuse)。いくつになっても観客を魅了するプレイ。この日見せた右手一本で放つアンダーハンドシュートには度肝を抜かされた。Marechekとのコンビプレイは、いつも創造性豊かで楽しませてくれる。
 最近日本のサッカー界では「ファンタジスタ」という言葉がよく使われる。特にマスコミはやたらこのファンタジスタという言葉を使いたがるが、ファンタジスタとは、イタリア語の“ファンタジーア”(創造力、インスピレーション)の名詞で、「ファンタジーを創造する人」「創造性豊かな人」という意味。イタリアでよく使われる言葉で、サッカー選手に使う場合は、高度な技術に裏打ちされ、インスピレーションのままに創造力あふれた華やかなプレーで観客を魅了する天才的な選手をさす。ファンタジスタは、単に巧いというのではなく、それ以上に魅了するものがなくてはならないようだ。
 Gaitにファンタジスタという言葉を当てはめようとは思わないが、創造力あふれる華やかなプレーはまさにそれにふさわしい。彼のプレイにはいつもフレア(閃き)がある。今回のオールスターゲームを観て感じたことは、この「フレア」である。オールスターゲームというだけあって、みな「巧い」プレイヤーである。しかし、フレアをもつプレイヤーはそう多くはいない。
 これは生まれ持ったものだろうか?環境によってつくられたものなのか?いったいどのようにすればこのようなプレイヤーは生まれるのだろうか?興味のあるところだ。
 高度なテクニック(技術)は反復練習によりある程度は習得できる。しかしながら、その高度なテクニックを「いつ」「どのように」使うか、すなわちスキル(技能)は単純な反復練習だけで向上するものではない。スキル向上の為には、様々な状況下で複雑な判断をさせ、実戦に近い状況での練習が必要であるということは理解できる。しかし、その中にも「フレア」のあるプレイができるかできないかは、何に起因しているのか?
 大味なゲームの中にもそんなことに思いをめぐらせた。