Stick-Handling

 ラクロスにおいてはいかに体力、精神力、知能があってもスティックをうまく使うことができなければ良いプレーヤーにはなれない。日本におけるラクロスプ レーヤーのほとんどが大学以降に競技を始める現状を考えれば、一番重点的に強化しなければならないのがスティックの扱いである。多少の違いはあるもののこ れはポジションに関係なく共通することである。オフェンス時とディフェンス時でスティックの握り方も多少違うが、ここではオフェンス時における一般的なグ リップを説明することとする。
 また、女子ラクロスのフィールドプレーヤーのスティックは木製(以下ウッド)のものとプラスティック性のヘッドのもの(以下プラスティック)があるが、 ここ数年でほとんどのプレーヤーがプラスティックのスティックを用いるようになった。これらは構造上の違いによりそれぞれの扱い方も異なる。しかしながら 日本においてはウッドスティックの指導方法をそのままプラスティックに適用していることもしばしば見受けられる。それぞれの特徴を十分に考慮した指導が必 要である。ここでは一般的なプラスティックのスティックを使用する場合を想定して説明する。

1.グリップ
 ヘッドに近い部分を握る手をトップハンド、スティックエンドに近い方をボトムハンドと言う。トップハンドはポケットが自分の体とは反対側に向けた状態 で、親指と人差し指でスティックを支え他の指は添える程度にする。手のひら全体でハンドルを握ってしまうとスティックの動きに制限をもたらしてしまうため 指でコントロールしなければならない。トップハンドとボトムハンドの間隔は肩幅程度である。しかしこれらは個人差もあり、また局面によっても異なるため、 その局面に応じたグリップが必要である。

2.ボールコントロール
 女子ラクロスのヘッドのポケットの部分は男子のそれと比べ非常に浅い為うまくコントロールしなければボールはすぐにポケットからこぼれ出てしまう。ま た、ディフェンスプレイヤーからスティックを守るために、地面に平行に持つのではなく、できるだけ地面に対して垂直に持つ必要がある。スティックが縦向き に保持されているということは体によりタイトに位置しており敵からのチェックからスティックを守ることができる。さらにその状態のままではすぐにボールは 落ちてしまうために「クレードル」という動作を行わなければならない。クレードルはスティックを縦にしたまま、手首と腕で遠心力を利用しリズミカルに動か すテクニックである。一般的にはトップハンドがリードする手となりクレイドルを行うが、場合によってはボトムハンドで行う方がコントロールが容易な場合も ある。ヘッドが肩より上の位置にある時こそが素早くスローできるポジションである。

[Key]
a.     できるだけスティックをまっすぐ地面に対して垂直に保つこと。こうすることによってボールを落とすことなくダッジができ、チェンジハンドもできる。また、ディフェンスにマークされていてもパスやシュートの動作にすぐ移ることができる。
b.     ディフェンスにマークされているときはスティックをそのディフェンダーから遠ざけ、体でスティックをプロテクトする。初心者はスティックが無防備なままダッジを行う傾向があるため注意が必要。
c.     ヘッドは常に肩より上の位置に保持すべきである。その位置こそが素早くスローできるポジションである。

3.スローイング
 オーバーハンドスロー、アンダーハンドスローやその他様々なスローイングの方法があるが最も多く用いるのがオーバーハンドスローである。オーバーハンド スロー(右で投げる場合)ではトップハンド(右手)を肩まで引き(野球のスローイングの様に)かつ肩よりも高い位置に引き上げる。少しスティックを後方に 倒し、左足を前方へ踏み出しつつ、スティック下部(左手)を投げる方向に向ける。トップハンド(右手)を前方へ押し出しつつ、ボトムハンド(左手)は体側 に引き寄せボールをリリースする。この際投げる方向へフォロースルーをとる。

[Key]
a.     スローイングは、トップハンドとボトムハンドを均等に用いて引く、押す動作を相互に行うことによって成り立っている。どちらか一方に偏り過ぎるとボールの威力に影響を及ぼす。
b.     もしボールが低く飛ぶようであれば、以下のことをチェックする。
・トップハンドに力が入りすぎていないか?
・ボトムハンドを引き過ぎていないか?
・ボールのリリースが遅くないか? 等

4.キャッチング
 ボールが飛んでくる場所や自分の体がどのような方向を向いてるかなどによりキャッチングの方法も異なる。前方からボールが飛んでくる場合は、顔の右前方 にヘッドを構え(トップハンドが右手の場合)、ヘッドの面をできるだけ大きく相手に見せる。すなわちボールが飛んでくる方向にスティックのヘッドを向け る。ボールをキャッチする際はボールの進行方向へ少しヘッドを引くようにし、ボールの勢いを吸収する。

[Key]
a.     ヘッドはボールに向かっていってキャッチするのではなく、ボールが向かおうとしている方向に少し引いてやると衝撃が少なくなり、ボールがこぼれ出ない。
b.     ヘッドの面を大きく見せることでキャッチするスポットが大きくなる。

5.スクーピング
 すくうような動作で地面のボールをとる。(トップハンドが右手の場合)トップハンドとボトムハンドは肩幅ほどに間隔をあけ右足をボールにできるだけ近づ け踏み込み、ヘッドは地面に対し平行近くまで寝かせボールをすくいあげる。それと同時にクレイドルを行う。トップハンドが右手の場合殆どは体の左側でと る。

[Key]
a.     トップハンドをヘッドに近づけるほどスクープに確実性がうまれるが、体を低く保つ必要がありスピードは低下する。
b.     トップハンドをヘッドから遠ざけることにより体を低くせずスクープできるためスピードは落ちない。しかし確実性は低下する。
c.     自分に向かって転がってくるボールは比較的スクープしやすいが自分から遠ざかるボールはとりずらい。このような場合には素早くすくいあげる必要がある。スクープのスピードが遅ければポケットにはいってこない。
d.     自分に向かって転がってくるボールであってもバウンドしている場合やボールに勢いのある場合はスクープが難しい。このような場合にはできるだけヘッドに 近い部分を持ちヘッドへの衝撃が少なくなるようボールが進む方向へ引いてあげることが大事である。バウンドしているような場合はトップハンドのみ(片手 で)でスクープする方が良い場合もある。

6.スイッチハンド
 スティックを素早く持ち替えることができればプレーの幅も広がる。
ボトムハンドをハンドルの上部にすべらせトップハンドの位置より高いところを握り、トップハンドはハンドルの下部を握る。

[Key]
a.     常にスティックを地面に対して垂直に保持するよう努める。
b.     ポケットを自分の体側に向けながら持ち替える。

7.シュート
 ラクロスの中で最も重要であり正確な技術を身につけなければならないのがシュートである。ゲーム中の様々な局面を想定し練習に取り組まなければならない。効果的なシュートは正確さと速さの融合による。
 大別すると、立った状態から放つスタンディングシュートと走りながら放つランニングシュートに分けられ、ダッジからのシュート、フィードを受けてからの シュート、グラウンドボールからのシュートなど様々な局面がある。また、ゴールからの距離により、ロングレンジ、ミドルレンジ、クロースレンジに分けられ る。
 オーバーハンドシュート、サイドハンドシュート、アンダーハンドシュート、ビハインド・ザ・バックシュートなどシュートの種類は数多くありアイデア次第では様々なシュートを放つことができる。しかしパスと同様オーバーハンドからのシュートが最も正確である。