Stick-Handling

special thanks/ K.Mitsumoto

 ラクロスにおいてはいかに体力、精神力、知能があってもスティックをうまく扱うことができなければ良いプレーヤーにはなれない。日本におけるラクロスプレーヤーのほとんどが大学以降に競技を始める現状を考えれば、一番重点的に強化しなければならないのがスティックの扱いである。多少の違いはあるもののこれはポジションに関係なく共通することである。オフェンス時とディフェンス時でスティックの握り方も多少違うが、ここではオフェンス時における一般的なスティックの扱いを説明することとする。

 

1. グリップ

 スティックハンドリングの第一歩はスティックの「持ち方」であり、これはラクロスというスポーツの根本的な基礎技術である。
<ポイント>
1)優しく、しかししっかりと両手で握る
強く握らなくては、相手選手に落とされてしまう可能性があるが、ただ単に強く握ってしまっては、スティックの動きが制限されてしまい、かたい動きしか出来なくなってしまうため、スティックを持つ時は、優しく、指を開けながら持つ。
2)常に両手で持つことを意識する
片手で持ってしまうと、次のプレーに繫がりにくい、また相手に落とされやすい。必要な時を除いては常に両手で持つ。
3)下の手(ボトムハンド)
スティックを持つ下の手(以下ボトムハンド)はグリップのエンドをしっかりと握る。これは相手のチェックに耐えられるようにするためである。
4)上の手(トップハンド)
スティックを持つ上の手(以下トップハンド)は、ボトムハンドよりもルーズに握る。スティックを滑らせるような感覚で握ることを意識すること。

 

2. クレイドリング

 スティックをロッキングモーション(上下運動)で動かすことによって遠心力を生み、ボールをコントロールする。上手い選手でもクレードルに気を取られてパスアウトが遅かったり、走るスピードが遅くなったりする選手がいるが、これはあくまでボールを安定させるだけのものである。どのような状況でもボールがヘッドからこぼれ落ちないように無意識にクレードルでき、さらに常にパスアウトできるような態勢でなければならない。パスをしようとしてから準備をしていては良いタイミングでパスすることはできない。

サイドハンドフロントクレードル:フィールドを全速力で走るときなどに使う。このクレードルの場合、クレードルによってスピードを落とさないようにすること。
アップライトクレードル:シュート、もしくはパスアウトする前に行うもの。次のプレーに素早く移行するために行う。
パワークレードル:強くクレードルする程、遠心力は強くなり、ボールが重く感じることがある。この強めのクレードルを「パワークレードル」と呼ぶ。パワークレードルはダッジをかける時、全速力で走る時、そして相手にチェッキングされたときに落とされない為に使用する。
ワンハンド・クレードル:サイドハンドフロントクレードルと同じ動作でクレードルするが、片手の場合はスティックを垂直に持ち、トップハンドだけでクレードルを行う。クレードルしていない手は、ディフェンスのチェックからスティックを守る為に使う。
<ポイント>
1)すぐにボールをリリースできるようにする
すぐ投げられないようなクレードルは意味がない。例)耳から頭の前まで持ってくるようなクレードル
2)耳より後ろで行う
パスやシュートのモーションにすばやく移行できるように、クレードルは耳より後ろで行う。また、これによりディフェンスのチェックを避けることもできる。
3)肩を使う
クレードルは手首だけを使うのではなく、肩を使うことを意識することが重要である。
4)力を抜く
リラックスして、全体の動きをコンパクトに一体的な動きにする。


3. スローイング

 キャッチングと並んで最も重要な要素である。パスがおろそかになっている選手は試合には出ることはできない。パス技術が高い選手は良いシュートも打てるようになる。
<ポイント>
1)縦ぶりで大きく振り切る
野球のピッチャーのように、胸はフォロースルーによって最終的にターゲットの方向に向ける。また、トップハンドはスナップを利用する。ボトムハンドはプッシュ・プル・モーションという基本的な動作で、ターゲットに対してスティックエンドを押し出し、投げる時に下に引く。
2)ボックスに投げる 
ボックス(相手の頭の横あたり)に投げることで相手に取りやすくするだけでなく、相手の次のプレーへの移行を早めることができる。       
3)体重移動
ボールを投げる際に重心を後ろから前に移動させ、下半身で生み出した力を体幹、腕そしてボールへと伝える。
4)持つ位置
長すぎず、短かすぎず、肩幅より少し狭いくらいの長さで持つ。スローイングにおいては長く持てば肘関節の屈曲と伸展が中心となり、短く持てば肩関節の動きが必要となる。
5)スティックを高く構える
スティックが寝ていたり、担いでいる選手が多くいるが、より大きなフォームを作り出すためにも、スティックをできるだけ高い位置で構え、45度くらいの角度になるようにする。

 

4. キャッチング

 ゲームでは立ち止まってキャッチングすることは少ない。少しでも動きながらキャッチをする練習が必要である。また、足を動かすことで、どんな球にも反応がしやすくなる。
<ポイント>
1)スティックを立てる
スティックを寝かせると引きキャッチの方向とクロスの向きがずれてしまう。必ず立てて、フェイスが相手に見えるようにする。
2)引きキャッチ
トップハンドを少し前方に傾けさせキャッチングする瞬間、スティックをパスの軌道と同じ向きに引く。スティックを引くことによってパスのスピードを吸収し、安定したキャッチが行えるのである。また、次のプレーにもつながりやすくなる。
3)反対側の肩をターゲットに向ける
多くのプレーヤーは正面を向いてキャッチするため投げるまでに時間がかかっている。この向きで構えることにより、パスもできダッヂもかけられシュートも打てる。トップハンドが右手の場合は左肩をターゲットに向ける。

 

5. スクーピング

 試合のポゼッションに大きく関わるプレーである。グランドボール(以下GB)で相手を圧倒することができれば、試合の主導権が握れる。より、ハッスルしたチームがGBを制することができるが、最終的には個人のGBの個人技術が重要となってくる。
<ポイント>
1)ボックスポジションに持ってくる
グランドボールは拾って終わりではなく、その後ボックスポジションまで持っていき、その後にすばやくパスが出せることを意識する。
2)スティックと地面が平行(点でなく、線ですくう)
腰を落とし、「重心」を低く構えることである。低姿勢は、バランスを保つことが出来、且つ相手の当たりにも負けない姿勢である。さらに、地面にもスティックが近いので、スクープもし易くなる。前の手ですくいに行くのはよくない。
3)ボールをすくったらスティックを左に隠しながら(右手の場合)走りぬける
スティックを使って、拾おうとすると、クランドボールはすくえないので、イメージとしては走りながらボールがスティックに入ってくる感覚でスクープする。また、拾うときは体をボールとディフェンダーの間に入れる。
4)ボール、リリースの声
仲間と役割分担をするために必要である。「ボール」はボールをすくいにいく声。「リリース」はスクープ完了の声。相手の選手に体を入れる「マン」の声もある。